日田のこれから 市長選を前に

2015/07/02

大分合同新聞が市長選を前に報道している。・・・・・『日田のこれから 市長選を前に③』日田市は昨年10月、市町村合併前の旧町村役場(2町3村)に置く5振興局のうち、3振興局を維持し、2振興局を業務縮小して支所にする素案を示した。今後3年かけて住民と話し合い、地域振興策などを講じるとしているが、支所となることが提案された地域は強く反発している。再編は今後の厳しい財政見通しが背景にある。この件について、原田啓介市長は市議会6月定例会の一般質問で「効率的な行政運営が不可欠」と答弁。素案は2013年度から担当課や振興局などでつくる検討会でまとめたことを説明し、「地域活性化プランの実施や、拠点となる施設の基盤整備の財源に合併特例債を活用できる今だからこそ提案した。持続可能な自治体制づくりや振興策を地域の人と考えたい」と理解を求めた。

一方、住民は合併後に地域の衰退が加速したと感じている。小中一貫校となったのを機に14年度から津江小は中津江村内に移転。規模が縮小した支所になれば町としての存在感が薄れて「さらに衰退が進むのでは」という懸念がぬぐえないでいる。上津江町は2月に、前津江町は4月にそれぞれ振興局の存続を求める要望書を市長に提出。上津江は3月から反対を訴える横幕も町内に掲げている。再編案が示されてから半年が経過。その間、市と話し合う機会がなかったのも不安の一因になっているという。市は「市長選を控えているため」としており、住民は選挙後の動きを注視している。

上津江地区振興協議会の嶋崎雄児会長(62)は「人口が減る中、いずれ再編されることは想像できる。農業や産業の振興がまだできてない今、(反対を)やめる時期でない」と強調する。市企画課は「今は提案しただけの状態。今後の議論で、少しずつ不安や不信みたいなものを埋めて、感情的な部分もほぐしていければ」としている。今後どう住民の理解を求めていくかが問われている。  <メモ>日田市の素案は、天瀬町、大山町、前津江町、中津江村、上津江町のうち、前津江振興局を大山の支所、上津江を中津江の支所とする。人員配置や再編時期などは未定。住民サービスの低下を招かないよう、利用頻度の高い証明書発行や収納業務などの窓口業務は支所に残す。  ※この記事は、6月25日大分合同新聞朝刊に掲載されています。

『日田のこれから 市長選を前に④』・・・・・日田祇園祭、川開き観光祭など集客力の高いイベントの多い日田市で、観光客の数が落ち込んでいる。2013年は472万人。09年からの5年で約2割の108万人も減った。観光は伸びが期待できる基幹産業の一つ。各地域や観光施設の連携やPRが課題となっている。市観光課によると、09年は580万人。このうち市最大の観光名所の豆田地区がある旧日田市内は217万人で13年までに30万人も減った。

豆田地区の観光客の伸び悩みについて、日田商工会議所の高山英彦会頭は「天領日田を象徴する施設がない」。市のPR役を担う「水郷ひた観光親善大使」で日本旅行営業推進本部担当部長の平田進也さん(58)=奈良県在住=は「『天領日田おひなまつり』などは全国トップレベルのイベント。関東、関西で認知度があまりないのは、地元が観光資源の魅力に気付いておらずPRできていないから」と指摘する。市は歴史的な町並みをより良くしようと、幹線道路の無電柱化や町並み保存事業などハード面の整備を充実させてきた。しかし、減少の歯止めはかかっていない。

「お金を落とす機会を増やせば観光客も増え、商店街の活性化につながる」と市観光協会顧問の石丸邦夫さん(71)。滞在時間を増やすため、隣接する町にあった「西国筋郡代役所」の復元などを提案する。南の咸宜園までの道のりを整備して散策距離を延ばしたいという。「咸宜園跡は今年4月に日本遺産となった。回遊性を持たせる足掛かりとなるのでは」と期待を寄せる。外国人観光客増という明るい兆しもある。九州運輸局の調べで、14年の九州への外国人入国者数は167万5千人(前年比33・2%増)で過去最高。日田市でも受け入れ態勢を整えるためホームページや案内板の多言語化、公衆無線LANサービスの設置などが求められている。

藤原朱美市商工観光部長は「JRデスティネーションキャンペーン開始などのチャンスもある。1カ所だけを訪れて帰すのでなく、豆田地区から旧郡部など、他の観光地につながる仕組みづくりとPRを急ぎたい」と話している。  ≪メモ≫日田市豆田地区は、江戸時代以降に造られた歴史的な建造物が立ち並ぶ。2004年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれた。「天領日田おひなまつり」や「千年あかり」など、日田を代表する祭りの会場にもなっている。 ※この記事は、6月26日大分合同新聞朝刊に掲載されています。 

『日田のこれから 市長選を前に⑤』・・・・・日田市は、市民主体のまちづくりを実現するための基本理念を定めた自治基本条例を2013年12月に制定。市はNPO法人などの団体支援を進めている。市民活動推進課が把握する市内で活動するNPOは29団体、任意団体は110団体(今年6月現在)。多様化、高度化する市民ニーズに応えるには行政対応だけでは限界があり、市民と協働する必要性が出てきたことが背景にある。

「市の講座のおかげで活動が成長している。手弁当では実現できない事業にも取り組めた」。12年に設立した読み聞かせグループ「エホント」(3人)の石松リエ代表(50)は12、13年度に市主催のNPO協働推進講座に参加。情報発信や補助金申請手続きなど実践的なスキルを学んだ。13年度から市が非営利で公益的な取り組みに対し事業委託する市民サービス協働事業に挑戦。市の委託費を受け、廃校となった学校の図書を民間施設に配本し、本を通じたコミュニティーづくりを展開している。NPO協働推進講座は市民協働に向けた人材や団体育成の一環。市民サービス協働事業はこれまでできなかった行政サービスを市民力を活用し、展開するもの。委託費を支払うことで市民団体の“体力づくり”にも貢献している。

一方、活動の広がりには課題も見えている。自治会や市民団体のまちづくり活動費の6割以内を助成する制度は「周知が不十分な面もあった」(市民活動推進課)こともあり、本年度の利用はまだ0件。交流サイト「フェイスブック」を使った市の情報発信を求めてきた日田情報産業協議会の宮田寿望さん(50)は「市民協働には市民との情報共有が欠かせない。本年度内に活用される見通しになったが市の対応は遅い」と指摘する。石松代表は「市民協働に取り組む団体の顔触れが同じになりがちなのでもっと広がってほしい。市の支援体制は整ってきたが、運用面でも市民活動が長期にわたって継続できるよう十分な配慮をしてほしい」と訴えた。 ※この記事は、6月27日大分合同新聞朝刊に掲載されています。