市政や暮らしの課題について①

2015/07/01

大分合同新聞が5回のシリーズで市長選を前に報道している。・・・・・・『日田のこれから 市長選を前に①』・・・・・・市町村合併から10年を迎えた日田市。市域は広がり効率的な行政運営などさまざまなメリットが生じたが、人口減など課題も抱えている。市長選挙(7月5日告示、同12日投開票)を前に市政や暮らしの課題についてリポートする。(5回続き)

日田市前津江町の自営業、梶原和人さん(44)は11年前に広島市から古里に戻った。「帰省時に加わった地元の青壮年グループは約40人もいて心強かったが、わずか10年で半分に減った」。高齢化が進む上、子どもの高校進学や就職を機に前津江町を離れていく。その姿を見るとどこまで人口が減るのか心配になる。旧日田市の人口は昭和30年代の約7万人がピーク。天瀬と大山、前津江、中津江、上津江各地域を加えると約10万人に達した。2005年3月に日田の旧市郡が合併して新日田市が誕生。ところが半世紀で約6万8700人(今年5月末現在)まで減少した。旧日田郡の前津江、中津江、上津江は千人を割り込み、生活基盤を維持するためにも人口維持は死活問題になっている。

市は人口減少対策として、人口の自然増を求め出生率アップを目指した子育て支援、人口の社会増を目指した企業誘致や雇用確保などの施策を実施してきた。ただし明確な歯止めにはなっていないのが現状だ。国の「まち・ひと・しごと創生法」の制定を受け、11月末までに人口減対策の目標や実施項目を定めた日田市版総合戦略の策定を急ぐ。市企画部は「これまでの人口減少や地域振興対策事業を見直し、核とすべき事業は何なのかを見いだしていく。限られた時間の中で市民が本気で議論し、アイデアを出すかどうかが成功の鍵となる」という。

日田商工会議所は2013年に市の将来人口調査を大分大学に依頼。効果的な対策を講じなければ50年の人口は約3万8千~約3万5千人と推計している。高山英彦会頭は「人口減イコール消費者減。このままでは小売業を中心に事業所が成り立たなくなる。後継者を育てず廃業を選択する事業所も出始めており、今ある事業所が皆生き残るのは困難」と危機感を抱く。梶原さんも10年後の市の姿を想像すると不安を拭えないでいる。「まちづくりにも関わってきたが、市担当者は人事異動で変わり戸惑うことが少なくない。市長も3人目。人が変わるのは仕方がないが、住民が古里で安心して暮らせると思える道筋をしっかりと付けてほしい」と願っている。 ※この記事は、6月23日大分合同新聞朝刊に掲載されています。

 『日田のこれから 市長選を前に②』・・・・・日田市のJR日田駅前から続く商店街から徒歩5分ほど。コンクリートの基礎部分がむき出しの空き地が広がっている。ここは市が掲げた市街地中心部再開発事業の予定地。複合施設や公園を整備する活用案に賛否両論が巻き起こり、市は2014年度、市民の反対意見などを理由に事業中止を決めた。市を二分したのは、市内三本松の民有地(約1万平方メートル)活用策を検討した「市街地中心部にぎわい創出事業」。市民らを募ったワーキング会議(約40人)でアイデアを出し合った。13年7月の発足から半年で会議は10回を超えた。「10年先を見据え、高齢者や子育て世代の拠点ができるという期待が高まった」。会議メンバーの松重哲市商店街連合会長は振り返る。

市は事業に合わせて対象地の空き地を所有する企業と交渉を継続。企業から市老人福祉センター(中ノ島町)などとの用地交換案が示され、市は福祉機能の一部を複合施設に再編する方向で事業を進めた。14年2月、コンサルタント会社がメンバーの意見を基に整備案を集約。高齢者や親子、まちづくり活動団体が集まれる複合施設の建設計画を示した。市民からは賛成の声がある一方、「ハコモノは必要ない」などの意見も相次いだ。市は14年12月、反対意見や民有地所有者との土地売買交渉の難航を理由に中止を決めた。

中止したことについて商店街関係者からは賛否の声が聞かれる。ある店主は「身の丈にあった事業ではなかった。地道に空き店舗対策などを図るべき」と冷ややか。一方、松重会長は「中止のままでは空洞化はさらに進む。市民が同意できる別の空き地活用策が必要」と話す。市の中止表明以降、具体的な市の動きはない。長年の課題である市街地中心部の空き地活用対策はいまだ宙に浮いたままだ。市街地中心部の空洞化は年々厳しさを増している。新たな活性化策が求められている。

メモ・・・・市街地中心部にぎわい創出事業では、市民らによるワーキング会議で出されたアイデアを市から委託を受けたコンサルタントが整備案(空間計画案)にまとめた。複合施設と公園を建設し、ソフト面の充実も図る。主な内容は▽高齢者や子どもの集える場所▽子育てママの交流▽快適に過ごせる木陰空間▽市民団体の活動拠点▽商店街と連携した地場産品の提供▽行政の証明書発行窓口―など。2013、14年度の事業費は計約805万円。  ※この記事は、6月24日大分合同新聞朝刊に掲載されています。