「増税なき復興」の基本は『まず公務員人件費削減せよ』

2011/09/29

報道によると東北震災復興の財源が提示され増税総額11兆2千億円と発表されたが、9兆2千億円を修正したものだが、「腰だめ」の数字といわざるを得ない。しかも国民に厳しい負担を強いる一方、政府・与党の歳出削減努力は極めて不十分だ。凍結したはずの新たな国家公務員宿舎の建設再開や国会議員の定数削減の放置など枚挙にいとまがない。さらに、増税はデフレから抜け出せない日本経済に決定的な打撃を与えかねない。国会議員の中にも増税への強い異論があるのは、日本を衰退させることへの危機感によるものだろう。臨時国会は30日閉会されるが、与野党は増税ありきの方針を修正し、増税の前にやるべきことを実行してほしい。
衆院予算委員会で興味深い質疑があった。みんなの党の江田憲司幹事長が民主党のマニフェスト(政権公約)を引用して「国家公務員の人件費2割カットで1兆円の財源を捻出するとの約束は実現するのか」と野田首相にただした。首相が「平成25年までに取り組む。旗は降ろしていない」と答えると、江田氏は「だったら、1兆円×10年で、10兆円の財源が増税せずとも捻出できるではないか」とたたみかけた。年間1兆円以上の歳出削減を生む国家公務員の人件費削減という自らの約束を果たそうとせずに、増税に走る姿勢は国民の理解を到底得られない。
政府は公約の代わりに国家公務員給与を時限措置で約8%引き下げる法案を国会に提出したが、これでは合計でも6千億円しか捻出できない。また、人員削減に向けた中央省庁出先機関の地方移管も進んでいない。公務員人件費の削減を地方にも広げれば、さらに大きな歳出削減効果が見込める。肥大化する地方交付税の圧縮にもつながる。首相が強調する財政規律の維持や財政再建にも貢献するだろう。増税を前提にしてしまうと、国会議員や国家公務員の人件費削減など、自ら身を削ろうとする推進力は失われる。阪神大震災では増税せずに復興を果たした事実を思い起こす必要がある。今回も、これを達成する政治の決意を示すことを優先すべきである。