安倍総理の靖国神社参拝に・・・

2013/12/27

安倍総理①安倍総理②安倍総理③

安倍晋三首相は何故この時期に、しかも極めて唐突なタイミングで靖国神社に参拝したのだろうか。こう思ったのは私だけではないと思う。多くの国民は、あっけに取られる思いで参拝する安倍首相の姿を凝視したことだろう。靖国神社をめぐる、さまざまな問題に対する見解はともかく、驚かされた人が多かったはずだ。およそ1年間の短命に終わった第1次安倍政権で首相は参拝の機会を見いだせなかった。そのことを「痛恨の極み」と言い表していただけに、念願をようやく果たしたという思いなのだろう。

ただ、一国の政治をリードする首相の振る舞いとしては、深い思慮を欠いたと言わざるを得ない。予想された通り、中国、韓国の強い反発を招き、米国からも「失望の声明」が出されたことが、何よりの証しだ。冷え込んだままの中国、韓国との関係改善は遠のき、首相のこだわる国益にも影響しよう。個人の思いは思いとしても、立場を踏まえずに信念を貫けば、当然のように摩擦を引き起こす。首相は参拝後、「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」と話したが、それは一方の側だけで通用する理屈にすぎない。平和を希求する「真意」を伝えようとするのであれば、何より他国への気遣いが欠かせない。それがなくては、発言は説得力を持ち得ない。

安倍首相が2度目の政権を担って以来、いずれ参拝に踏み切るという見方は根強かった。昨年9月の自民党総裁選では、政権を担った際の参拝実現が半ば「公約」だった。首相に返り咲いてから1年、靖国神社の例大祭や終戦記念日といった節目はあったが、いずれも見送ってきた。中国や韓国との関係がこれ以上悪化しないよう、自制に努めたことが思量される。だが、参拝への強い意欲は変わらず、首相就任から丸1年のきのう、靖国神社を訪れた。

安倍首相は「英霊に対しての尊崇の念」と、多くの政治家と同様の参拝理由を説明した。さらにこの日を選んだのは「安倍政権1年の歩みの報告」のためだったとも話した。参拝に伴って発表した談話には「不戦の誓い」や「過去への痛切な反省」、「中韓両国との敬意を持った友好関係」といった言葉も盛り込まれた。偽りのない真情なのだろう。安倍首相にとって参拝して平和と友好を誓うのは、ごく自然なことなのかもしれない。

ただ、中国や韓国の人々がどう受け止めるかは、「個人の心の問題」とはまた別次元だ。本当に「敬意」を抱くのであれば、相手に依然として残る被害者感情を逆なでするような行為は慎まなければならない。この1年、安倍政権は国民の高い支持を受けてきたが、目指す方向には危うさが漂っている。政治的な力を背景に突っ走るのではなく、十分に抑制しつつ政権運営に当たることが切実に求められている。今回の安倍総理の靖国神社参拝に国民はNOのサインを出すだろう。引いては政権運営に大きく響くだろう。