一年間おつかれさま!!

日本経済新聞から・・・『日ごろは矢のように過ぎ去る時間が大晦日にはゆっくり流れる。もし一秒一秒の密度に違いがあるなら、今夜午前0時が迫るにつれて一秒は次第に重く、濃くなるのではないか。うれしかったこと。悲しかったこと。日付が変わる瞬間に向かって一年の思いが凝縮する。

▼ニューヨークのカウントダウンには世界中から百万人が集まるという。紙吹雪と歓声が渦巻くタイムズ・スクエアで、一人はらはらと泣く人を見たことがある。質素な身なりのアフリカ系の女性だった。どこの誰かも分からない。ただ、時が極限まで凝縮した空間では、他人との心の距離も限りなく縮まるのだと気づいた。

▼日本では除夜の鐘が鳴り始めるころ、人々の気持ちが静かに重なり合う。いつもは満員電車で押し合う相手でも、きょうは赤の他人とは感じない。一年間おつかれさま。お互い頑張りましたね。よいお年を。ありがとう……。人の数が多い都会では実際に言葉にはしないけれど、耳を澄ませば声なき声が街中に響いている。

▼年が明けてしばらくすれば、そんな暦の魔法は解け、人の一体感は薄まっていく。そしてまた世知辛い日常が始まるだろう。ならばこの大晦日の時間は大切に過ごしたい。人への感謝、いたわり、許す優しさ。たんすにしまって忘れかけていた心を取り出し、きちんとたたみ直して、また元に戻す。そんな一日を送りたい。